EC市場の拡大に伴い、通販サイトの役割は単なる「商品を売る場所」から、ブランド体験を提供する「店舗」や、業務効率化を実現する「BtoBプラットフォーム」へと多様化しています。これからサイト構築やリニューアルを行う際、最も重要なのは「自社のビジネスモデル」と「将来の成長戦略」に合致した種類・システムを選ぶことです。
この記事では、通販サイトを「ビジネスモデル」「販売形態」「システム構築手法」の3つの軸で分類し、それぞれの特徴と、各フェーズで選択肢となる代表的なプラットフォームについて解説します。
ECサイトを構築する際、まず明確にすべきなのが「誰に対して販売するのか」というビジネスモデルです。ターゲットが企業か一般消費者かによって、サイトに求められる機能やUI(使い勝手)は決定的に異なります。
企業が企業に対して商品を販売するサイトです(卸売、Web-EDI、代理店販売など)。不特定多数に向けたAmazonなどのオープンな市場とは異なり、既存取引先との関係をデジタル化し、業務コストを削減する役割を担います。
近年、電話やFAXで行っていた受注業務をデジタル化したいというニーズが急増しており、次のような機能が標準的に求められます。
IDとパスワードを持つ契約済みの会員(取引先)のみが閲覧・購入できる機能です。
顧客ランクや契約内容に応じて、A社は掛け率70%、B社は60%といった価格を自動で出し分ける機能です。
クレジットカード決済だけでなく、企業間決済(請求書払い)や、社内稟議に必要な見積書の自動発行機能を備えることです。
これらを導入することで、入力ミスや電話対応の工数を大幅に削減でき、営業担当者が本来の提案業務に集中できる環境を作ることが可能です。
企業やメーカーが一般消費者に商品を販売する、最も一般的な形態です。競合商品との比較が容易な現代において、単に機能的に買いやすいだけでなく「ブランドへの共感」を生み出す設計が求められます。
特にメーカーが直接消費者に販売するDtoC(Direct to Consumer)では、顧客データを自社で保有できる利点を活かし、次のような要素が重要視されます。
ブランドイメージを損なわない高いデザイン性と、スマホでの操作性に優れたUI/UXを実現することです。
実店舗とECの会員情報・ポイントの統合や、アプリとの連携によって、チャネルをまたいだ一貫した購買体験を提供することです。
Instagramショッピング機能やLINE公式アカウントを活用し、集客から接客までをシームレスにつなぐ導線設計を行うことです。
次に、取り扱う商品の数や見せ方による分類です。多くの企業が資産として構築を目指す「総合通販型」と、特定のマーケティング手法である「単品通販型」では、適したデザインやシステムが異なります。
アパレル、雑貨、家具、食品など、複数のカテゴリーや商品を幅広く取り扱うスタイルです。ユーザーにサイト内を回遊してもらい、「指名買い」だけでなく「ついで買い」や「発見」を促すことで、LTV(顧客生涯価値)を高めていきます。
このタイプで成功するためには、膨大な商品数からストレスなく目的の品に辿り着ける「絞り込み検索」や「サジェスト機能」が不可欠です。また、「この商品を買った人はこれも見ています」といったレコメンドエンジンの活用や、スタッフコーディネートなどのコンテンツ発信を行い、ブランド全体のファンを育成する運用が求められます。
化粧品や健康食品など、特定の1商品(または少数のラインナップ)に絞り込み、定期購入(サブスクリプション)への引き上げを最優先するスタイルです。
この形態では、サイト全体を回遊させることよりも、縦長のランディングページ(LP)で商品の魅力を集中的に訴求し、ページ遷移させずに購入完了まで導くことが重要です。総合型とは求められるノウハウが異なり、広告運用との連動や、フォーム一体型LP機能、購入後のステップメール配信などがシステム要件として重視されます。
サイトの種類や要件が決まったら、それを実現する「システム(カート)」を選定します。ここでは、一般的な構築手法の分類と、各カテゴリーでよく利用される代表的なサービスを紹介します。
クラウド上のプラットフォームをレンタルして利用する形式です。初期費用・月額費用を抑えられ、システムが自動でアップデートされるため、セキュリティ面でも安心です。現在はスタートアップから年商数十億円規模まで幅広く利用されています。
世界シェアNo.1のプラットフォームで、高いデザイン性と数千種類のアプリによる圧倒的な拡張性が特徴です。越境ECにも強く、ブランドサイト構築に適しています。
日本国内発のカートシステムです。日本の商習慣に合わせたきめ細かい機能が標準搭載されており、サポート体制が手厚い点が特徴です。
初期費用無料で手軽に始められるカートです。小規模事業者や個人事業主のテストマーケティングによく利用されます。
ベンダーが開発したECシステムのパッケージ製品をベースに、自社向けにカスタマイズして構築する形式です。ASPでは対応しきれない独自の業務フローや、基幹システム連携が必要な中堅・大手企業で採用されます。
システムが自動更新される「クラウドEC」というジャンルの代表格です。SaaSの利便性とスクラッチのカスタマイズ性を両立しており、システム陳腐化のリスクを抑えられます。
国内で多くの導入実績を持つパッケージシステムです。BtoCからBtoBまで幅広い業種に対応可能な標準機能を持ち、開発体制も充実しています。
プログラムの設計図(ソースコード)が公開されているソフトウェアを、自社サーバーにインストールして利用する形式です。ライセンス費用がかからないため、開発費を抑えつつ自由なカスタマイズが可能ですが、セキュリティ対策や保守は自社(または制作会社)の責任となる点に注意が必要です。
日本発のオープンソースシステムです。国内の開発パートナーが多く、日本語の情報も豊富なため、独自性の高いサイト構築でよく利用されます。
Webサイト制作ツール「WordPress」のプラグインとして動作するカートシステムです。既存のブログメディア等とEC機能を統合したい場合に適しています。
単なるカート機能だけでなく、Webサイト全体のコンテンツ管理(CMS)やマーケティング機能が統合された大規模プラットフォームです。Web、アプリ、実店舗などの顧客データを統合し、パーソナライズされた体験を提供する場合に選ばれます。
CMSとマーケティングオートメーション機能が一体化しており、顧客一人ひとりの行動に合わせたコンテンツの出し分けを得意とします。グローバル企業での採用実績が豊富です。
世界的なCRM(顧客管理)ツールであるSalesforceとの連携が強力なプラットフォームです。顧客データを軸とした高度なマーケティングを実現します。
通販サイトの構築において、「どのカートが一番優れているか」という問いに絶対的な正解はありません。「BtoBで業務効率化したいのか」「ブランドサイトとしてファンを育てたいのか」といった目的と、現在の事業規模、そして将来の構想によって最適な選択肢は異なります。
ASP型(Shopify、MakeShopなど)を選択することで、初期コストを抑えつつ柔軟にスケールさせやすくなります。
パッケージ / クラウドEC型(ebisumart、ec-beingなど)を採用することで、自社固有の業務プロセスや基幹システムとの連携要件を満たしやすくなります。
エンタープライズ・DXP型(Sitecore、Salesforce Commerce Cloudなど)を活用することで、複数チャネルにまたがる顧客体験を統合し、パーソナライズされたコミュニケーションを実現できます。
SynQ Partners株式会社では、特定のカートシステムに縛られず貴社の事業フェーズと目的に合わせたフラットな視点でご提案が可能です。
ShopifyやMakeShopを用いた新規立ち上げの要件定義から、ebisumartやSitecoreを用いた大規模サイトの実装・運用支援までマーケティングと制作実行の両軸で対応いたします。
「自社に合うカートがわからない」「大規模サイトの運用パートナーを探している」など、ECサイトに関する課題をお持ちの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。