製造業のECサイトで既製品のカート購入と別注の見積り相談を両立させる二軸設計を解説します。なぜ両立が難しいのか、商品ページの導線設計、フォームの実装方法、具体的なパターン、運用上の注意点までご紹介します。
製造業のECサイトでは、既製品のオンライン販売と別注品の受付を同じサイト上で行いたいというニーズが多くあります。しかし、この二つは購入フローが全く異なるため、設計を誤るとどちらの顧客にとっても使いにくいサイトになってしまいます。
既製品は「商品を選ぶ→カートに入れる→決済する」というシンプルな流れです。一方で別注品は「要望を伝える→見積りを受け取る→仕様を確認する→発注する」という複数回のやり取りが必要です。
この二つを同じカート機能で処理しようとすると無理が生じます。別注品をカートに入れても、価格が確定していないため決済ができない。かといって「価格はお問い合わせください」と表示するだけでは、顧客は面倒に感じて離脱します。
この課題を解決するのが、購入導線とリード導線を分ける二軸設計です。
既製品をカート機能で販売する流れです。ECプラットフォーム(Shopify、makeshop等)の標準機能で対応できます。商品ページに「カートに入れる」ボタンがあり、オンラインで購入が完了します。
別注品の問い合わせをフォームで受け付ける流れです。ECプラットフォームとは別に、問い合わせフォームを設置し、顧客の要望を受け付けます。ここから先は営業担当が個別に対応します。
この二つの導線を同じサイト上に共存させ、ユーザーが自分の状況に合った導線を自然に選べる設計にすることがポイントです。
二軸設計の接点となるのが商品ページです。
既製品の商品ページには、通常の「カートに入れる」ボタンに加えて、「大口注文・別注のご相談はこちら」のリンクを設置します。既製品を少量購入したい顧客はカートへ、大量注文やカスタマイズが必要な顧客はフォームへ、自然に分岐できます。
別注専用の商品カテゴリまたはページを設ける方法もあります。「オーダーメイド」「別注対応商品」というカテゴリを作り、そこに別注可能な商品を一覧で表示します。各商品ページから見積り依頼フォームに遷移する導線を設計します。
ヘッダーやサイドバーに常に「別注・オーダーメイドのご相談」への導線を配置しておくと、どのページにいても別注の入口が見える状態を作れます。
別注用フォームの設計は、顧客の手間を最小限にしつつ、営業担当が初回対応するのに必要な情報を取得するバランスが重要です。
最低限必要な項目は、連絡先情報(会社名、担当者名、メールアドレス)、希望する商品またはカテゴリ、用途・仕様の概要、数量の目安、希望納期です。
画像やファイルのアップロード機能があると便利です。「こんな感じのものが欲しい」という参考画像や、既存のデータを添付できるだけで、初回のヒアリングの精度が上がります。
ECプラットフォームの標準機能だけではフォームの自由度が限られる場合、WordPressで別途フォームを構築する方法が現実的です。WordPressのフォームプラグインを使えば、条件分岐やファイルアップロード、自動返信メールの設定など、柔軟なフォーム設計が可能です。ECサイトからWordPressのフォームページにリンクで誘導する形にすれば、ECサイト自体を改修する必要がなく、導入コストを抑えられます。
WordPressでのフォーム構築については、別記事「WordPressで製造業向けのオーダーフォームを構築する方法」でも詳しく解説しています。
製造業のECサイトで二軸設計が機能するパターンを紹介します。
サイトのナビゲーションに「既製品」と「オーダーメイド」の二つの入口を設け、それぞれで異なる導線に分岐します。商品構成が明確に分かれている場合に適しています。
「そのまま購入」と「カスタマイズして注文」の二つの選択肢を商品ページに並べます。既製品をベースにしたカスタマイズ(色変更、サイズ変更、名入れ等)がある場合に適しています。
少量の場合はカートで購入、一定数量以上は自動的に見積りフォームに誘導する設計です。ロット数で価格が変わる製造業の商慣習に合った設計です。
二軸設計を運用する際の注意点です。
フォーム経由の問い合わせに対するレスポンス速度が重要です。カートでの即時購入に慣れた顧客にとって、フォーム送信後に何日も返事がないと不満になります。「○営業日以内に回答します」と明示した上で、できる限り早い対応を心がけます。
カート購入と別注の売上データを統合して管理する仕組みが必要です。ECプラットフォームのデータとフォーム経由の受注データが分断されていると、売上の全体像が把握しにくくなります。
フォーム経由の問い合わせを分析し、よくある別注パターンを既製品化するという改善サイクルも有効です。「この仕様の別注依頼が多い」と気づけば、それを既製品として商品化し、カート購入で完結するようにすれば、双方の手間が省けます。
ECサイトで既製品の販売と別注の受付を両立させるには、カートによる購入導線とフォームによるリード導線を明確に分けて設計することが鍵です。商品ページ上で自然に分岐できる導線を作り、フォームはWordPress等を活用して柔軟に構築する方法が、コストと実用性のバランスに優れています。
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