製造業が既存の「卸売」と新規の「EC販売(直販)」をバッティングさせずに両立させる方法を解説します。
既存取引先とのトラブルを防ぐチャネル設計のコツや競合を避ける価格戦略など、複数販路で売上を最大化するノウハウを紹介します。
製造業のEC導入で最も多い懸念が「既存の卸先との関係が悪化するのではないか」という問題です。長年の取引関係があるだけに、この不安は当然のことです。
結論から言えば、適切な棲み分けを設計すれば、卸とECは十分に共存できます。実際に両立している企業は多く、むしろECを始めたことで卸の売上も伸びたというケースすら存在します。
重要なのは、ECを始める前に卸先とのコミュニケーションを取り、お互いにとってメリットのある形を設計することです。何も伝えずにECサイトを公開して、卸先が後から知るという状況は避けるべきです。
棲み分けの方法にはいくつかのパターンがあります。
小ロット(個人〜数十個)はECで直接販売し、大ロット(数百個以上)は卸経由で対応します。卸先にとっては手間がかかる小口注文をECが吸収するため、むしろ歓迎されることが多い方法です。
EC限定カラーやEC限定サイズなど、卸では扱っていない商品をECで展開します。卸の商品ラインナップとバッティングしないため、摩擦が起きにくい設計です。
個人や小規模事業者はEC、法人大口は卸、と顧客の属性で導線を分けます。ECサイト上で「法人のお客様は卸売窓口へ」と誘導することで、卸先の利益を守りながらECの売上も伸ばせます。
卸とECを両立する上で最もデリケートな問題が価格設定です。ECで卸価格より安く売ってしまうと、卸先が不満を持つのは当然です。
ECサイトではメーカー希望小売価格で販売し、卸先には数量に応じた卸価格を維持します。エンドユーザーにとってはEC価格と卸先経由の価格がほぼ同じになるため、チャネル間の競合が起きにくくなります。
ECで値引きやセールを行う場合は、卸先に事前に通知するのが望ましいです。「今月のECセールで○○を10%オフにします」と伝えておくことで、卸先も自社のセール戦略を調整できます。
ECサイトを卸先の営業支援ツールとして位置づける発想は、共存を実現する上で非常に有効です。
卸先の営業担当者が顧客に商品を提案する際に、「詳しい仕様はメーカーのサイトをご覧ください」と案内できるように、商品情報を充実させておきます。高品質な写真、詳細なスペック表、用途別の選び方ガイドなどは、卸先にとっても営業ツールとして機能します。
さらに進んだ形として、卸先のWebサイトから自社ECサイトの商品ページにリンクを貼ってもらう方法もあります。これはSEO上の被リンクとしても効果があり、卸先にとってもエンドユーザーにとっても利便性が向上します。
卸売とEC販売の両立は、適切な棲み分け設計と価格戦略があれば十分に実現可能です。ECを卸先との競合ではなく、相互補完の関係として設計することが成功のポイントです。